脱炭素に向けた世界・日本の取り組みや現状について解説

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脱炭素に向けた動きは、世界的に加速しています。153ヵ国・1地域が2050年等の年限を区切ったカーボンニュートラルの実現を表明しています。これらの国におけるCO2排出量とGDPが世界全体に占める割合は、それぞれ79%、90%に達しました。

COP26では、パリ協定第6条に基づく「市場メカニズム」の実施指針が長年の交渉の末に合意され、パリ協定のルールブックが完成したり、インドが2070年カーボンニュートラルを宣言する等、脱炭素に向けた国際的なルール作りや機運の醸成に進展が見られました。

そこで今回は、脱炭素に向けた世界・日本の取り組みや現状についてお伝えいたします。

パリ協定とは?

地球温暖化問題について、世界各国に具体的な目標が示されたのは2015年にフランス・パリで開かれた「国連気候変動枠組条約締結国会議(COP21)で合意されたものが「パリ協定」で、京都議定書に代わる2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みで、歴史上はじめて、全ての国が参加する公平な合意です。
このパリ協定は、翌年2016年に発効され、全体の目標として、
・世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃より低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
・そのために、早急に世界のGHG(CO2を含む温室効果ガス)排出量をピークアウトし、21世紀後半にはGHG排出量と森林などによる吸収量のバランスをとる

以上のことが掲げられています。

パリ協定の概要

・世界共通の長期目標として2℃目標の設定。1.5℃に抑える努力を追求すること。
・主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること。
・適応の長期目標の設定、各国の適応計画プロセスや行動の実施、適応報告書の提出と定期的更新。
・イノベーションの重要性の位置付け。
・5年ごとに世界全体としての実施状況を検討する仕組み(グローバル・ストックテイク)。
・先進国による資金提供。これに加えて、途上国も自主的に資金を提供すること。
・二国間クレジット制度(JCM)も含めた市場メカニズムの活用。

日本の取り組み、現状

①地球温暖化対策推進法の改正

日本の「地球温暖化対策推進法」は、1998年に制定されてから、これまで数回の改定がされてきましたが、2021年5月の改正で、ネットゼロに関する内容が盛り込まれました。
その時の改正のポイントは以下の3点です。
・「2050年までのカーボンニュートラル実現」が基本理念として法律に明記されたこと
・地域の脱炭素を促進するため、地方公共団体における再エネ活用等の施策目標を追加したこと
・企業の脱炭素化を促進するため、企業の排出量情報のデジタル化・オープンデータ化を推進する仕組みを定めたこと

②脱炭素関連事業への資金支援

さらに、翌2022年5月の同法改正で、脱炭素化を資金面で支援する官民ファンド設立が盛り込まれ、同10月に脱炭素化支援機構が設立されました。
設立時の出資金は204億円で、うち民間株主は金融機関や事業会社など82社が102億円を出資し、国は財政投融資として102億円を出資しています。
同社は脱炭素に貢献するさまざまな事業に投融資を行います。再エネ・蓄エネルギー・省エネ、資源の有効利用、脱炭素社会の実現に資する幅広い事業領域が支援の対象事業となっています。

世界の取り組み・現状

脱炭素社会に向けた各国の取り組みは以下の通りです。

中国

中国は世界最大の温室効果ガス排出国であり、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めています。一方で、国内での取り組みが主体であり、国外での具体的な支援や協力については、あまり明確にされていません。

アメリカ

アメリカはバイデン政権が温室効果ガス排出削減を目指しており、再生可能エネルギーの普及や二酸化炭素を吸収する技術の開発などに取り組んでいます。また、アメリカは世界的な温暖化対策の中心的な役割を果たすことを目指しており、国外での取り組みや国際協力にも積極的です。

イギリス

イギリスは、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指す「ネットゼロ・キャンペーン」を掲げており、国外での取り組みや協力も積極的です。具体的には、発展途上国に対して気候変動対策の支援を行ったり、世界的なグリーンファイナンスの推進を目指したりしています。

フランス

フランスは、再生可能エネルギーの普及や二酸化炭素の排出削減に取り組む一方、国外での取り組みや協力についてはあまり積極的ではありません。

韓国

韓国は、2030年までに温室効果ガス排出量を2018年比で40%削減する目標を掲げており、国内外での取り組みに力を入れています。具体的には、発展途上国に対して再生可能エネルギーの導入支援を行ったり、国際協力を進めるためのグローバル・グリーン・グロース・イニシアチブを発足させたりしています。

脱炭素社会を実現するための3つの課題と解決策

脱炭素社会を実現するうえで、主に3つの課題があるとされています。また、政府は2020年1月に「革新的環境イノベーション戦略」を策定しました。課題解決に向け、国としても革新的な技術開発を行っています。

課題①:エネルギー産業における化石燃料への依存

国内のエネルギー産業において、化石燃料への依存度の高さが問題となっています。解決策として、排出後のCO2を炭素資源として再利用する「カーボンリサイクル」を行うことで問題解決に向けた対策を行っています。

課題②:物流によるCO2排出

物流はエネルギー産業に次ぐCO2の排出源となっており、脱炭素化の遅れに繋がる要因となっています。解決策として、電気自動車普及のための「高性能蓄電池」、再生可能な「バイオ燃料」、CO2や水素による「合成燃料」などの活用が挙げられています。

課題③:鉄鋼業ではCO2排出が避けられない

業界によっては、CO2排出が避けられない状況があることも事実です。鉄鋼製品の生産においては、CO2が必ず排出されてしまいます。解決策として、石炭の代わりに水素を使用する「ゼロカーボン・スチール」を採用するなど、脱炭素化へ向けての取り組みを行っています。

脱炭素社会に向けて私たちにできること

脱炭素社会の実現には、私たち一人一人が家庭でも取り組むことが必要です。
個人でも脱炭素社会に向けた取り組みを意識的に行うことによって、温室効果ガスの排出を減らすことが出来ます。今まで際限なく使ってきたエネルギーの消費を見直したり、脱炭素に向けた投資も必要になるでしょう。

日常生活のエネルギーを見直す

日常生活で使っているエネルギーを見直すのはとても大切です。日常生活のエネルギーを見直す取り組みについて説明します。

100%再生可能エネルギーを供給する電気会社に切り替える

私たちが使っている電気は、化石燃料を燃焼させることによって発生しています。そこで私たちにできるのが、100%再生可能エネルギーを供給している電気会社に切り替えることです。100%再生可能エネルギーであれば化石燃料を燃焼されずに電気を使うことが出来るので、温室効果ガスの排出を減らすことに貢献できます。電気会社の切り替えを検討しているなら、100%再生可能エネルギーを供給しているのかチェックしましょう。

ハイブリッドカーや電気自動車に乗る

一般的な乗用車はガソリンの元となる化石燃料を燃焼させて走行しています。広く普及されているので当たり前のように感じるかもしれませんが、排出されるガスが地球温暖化を加速させている一端になってしまっているのが問題です。そこで、二酸化炭素の排出量が少ないハイブリッドカーか電気自動車に乗り換えるのがおすすめです。これからの車は温室効果ガスの排出を減らす上に、ガソリンを使わないのでガソリン代が節約できるなど一石二鳥のメリットがあります。

省エネを心がける

完全に温室効果ガスの排出をゼロにすることが出来なくても、省エネを心がけることによって脱炭素社会に貢献することが出来ます。

エアコンの温度を調整する

エアコンは温度が高い、もしくは低くするほど積極的に稼働させるため、より多くの電気を消費してしまいます。これでは化石燃料を多く燃焼させてしまうことになるので、省エネを心がける必要性があるでしょう。冷房の温度を上げたり下げたりと調整することで、電気エネルギーを減らすことが出来ます防弾や防寒を心がけたり、断熱性や遮光性に優れた省エネ住宅に住んだりすることで冷暖房効率を上げるなど、工夫次第でいくらでも省エネになるでしょう。

公共機関を利用する

なるべく車の運転を控えて電車やバスなどの公共機関を利用するのがおすすめです。車は人一人が運転するので温室効果ガスを発生させてしまいますが、公共機関であれば数百人と多くの人が利用するのでその分温室効果ガスの発生を抑えることが出来ます。

ゴミを減らし、リサイクルを心がける

世界的にゴミの排出量は年々問題になっています。特に問題になっているのは、ゴミを燃焼させることによって発生する二酸化炭素の排出量が増えてしまうからです。ゴミが増えるほど二酸化炭素の排出量が増えるのと同義なので、家庭から出るゴミの量を減らすことが直接二酸化炭素を減らすことに繋がります。

設備や製品を見直す

設備や製品を見直すだけでも脱炭素社会に貢献することができ、伝習を変えたり住宅そのものの規格を変えたりなど様々な方法があります。

LED電球に変える

これまで白熱電球を使っているのであれば、LED電球に変えるのがおすすめです。白熱電球よりもLED電球の方が消費する電気エネルギーが少ないため、脱炭素社会に貢献することが出来ます。白熱電球よりもLED電球の方が長持ちしやすいことから、節電にもなります。

ZEH住宅の購入

ZEH住宅とはゼロエネルギー住宅のことで、家がエネルギーを生み出し、生み出されたエネルギーを使って生活するという高機能住宅です。断熱性能や遮熱性、優れた省エネ設備が導入されているのはもちろん、太陽光発電によって発電した電気のみを使うことが出来ます。日中は太陽光発電で電気を貯め、夜中は貯めた電気を使用するサイクルになっているため、電気エネルギーを発生することによって温室効果ガスを発生させません。

まとめ

本記事では、脱炭素に向けた世界・日本の取り組みや現状について紹介しました。

将来にわたり発展を続けていくためには、「脱炭素社会の実現」と「SDGsの達成」が必要不可欠です。
脱炭素社会の実現のために世界的に行われている取り組みであり、温室効果ガスを抑えるためには世界中の人々の協力が必要になります。持続可能な社会を実現するために、小さなことから積み上げていきましょう。

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