企業がカーボンニュートラルへ取り組む方法について解説

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「温室効果ガスの排出を『ゼロ』にする。」という目的で2021年10月、日本国政府は「カーボンニュートラル」を宣言しました。

今回は、企業がカーボンニュートラルへ取り組む方法について解説していきます。

そもそもカーボンニュートラルとは?

2020年10月、菅元総理は所信表明演説において2050年までに「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。

日本が目指す「カーボンニュートラル」とは、CO2だけに限らず、メタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスなどを含む「温室効果ガス」を対象にしたものであり、「全体としてゼロに」とは、「排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする」ことを意味します。

(参考記事)カーボンニュートラルとは?カーボンニュートラル基礎知識やカーボンニュートラルを軸とするスタートアップの現状について解説

カーボンニュートラルが必要なのは何故?

近年、世界では様々な気象災害が発生しており、今後日本においても、自然生態系、自然災害、産業・経済活動等への影響が出ると言われています。気候変動の原因となっている温室効果ガスは、経済活動・日常生活に伴い排出されています。

将来の世代も安心して暮らせる、持続可能な経済社会をつくるため、今から、カーボンニュートラルの実現に向けて、取り組む必要があります。

企業がカーボンニュートラルへ取り組む方法

では企業として具体的に何から手をつけて、どのような手段を取ればいいでしょう。以下でそれぞれ説明していきます。

省エネルギー(省エネ)の推進

まずはエネルギーの省エネです。省エネルギーと聞けば「節電」が思い浮かべますが、その他代表的例としては「LED照明」の設置や、流量調整方法として「インバーター」の設置、廃熱の回収として「ヒートポンプ」の設置が上げられ、大きな削減効果が見込めます。

また、適切な方法を選定するために公的機関(省エネルギーセンター)を利用することで効果の大きい手段が抽出できます。

再生可能エネルギー(再エネ)への切り替え

次にカーボンをゼロにする上で、電気そのものの見直しは欠かせません。「使う電気を再生可能エネルギーに切り替える」ことでCO2削減を実現します。

具体的な再生可能エネルギーは太陽光・風力・水力がメインで挙げられその他に、バイオマス・地熱・太陽熱・地中熱…etc等様々な方法で再生可能エネルギーが発電されます。

電力を切替とはいってもソーラーパネル等を一から設置するのではなく、電力会社やプランを切替ることや、「非化石証書」という環境価値のみを購入する手段のみで導入ができます。

作業工程自動化

カーボンニュートラルを実現するためには、作業工程を自動化し、生産効率を向上させることも重要です。

例えば、製造業における工場の機械設備を高度に自動化すれば、業務が停止・中断しているムダな時間(ダウンタイム)を最小化できるため、時間あたりの生産効率を高められ、工場から出る温室効果ガスを削減できるでしょう。

また、食品の流通業ではAIによって生産量を最適化し、廃棄を減らすことで資源やエネルギーのムダを削減できます。その結果、生産性の向上で企業の売上アップにもつなげつつ、温室効果ガスの排出削減が実現できるのです。

温室効果ガス排出量の見える化

企業がカーボンニュートラル実現に取り組む場合は、事業で排出される温室効果ガスを削減することが重要です。そのために、活動や工程ごとに温室効果ガスの排出量を測定し「見える化」しましょう。

例えば、IoTセンサーを使って二酸化炭素の排出量を測定することで、エネルギーの使用状況がデータとして蓄積されるため、ムダなエネルギーを使っている工程の削減や、二酸化炭素の排出量がより少ない燃料への転換といった、具体的な対策を検討できます。

カーボン・オフセット

「カーボンオフセット」とはカーボンニュートラルに向けて温室効果ガスを削減努力した上で、どうしても削減できなかった分・排出される分を、排出量に見合った削減活動に投資することや、植林や環境保護への寄付することによって埋め合わせるという考え方です。

具体的な方法として、以下の方法があります

・カーボンオフセットを活用したパッケージ商品等の製造・作成をすることで付加価値をつける
・商品のように「CO2を排出しない」会議やイベントなど参加
・「Jクレジット」や「非化石証書」などを購入

カーボンニュートラルに企業が取り組むメリットとは?

企業が今、経営の観点からカーボンニュートラルに取り組むメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?メリットを4つご紹介します。

顧客(お客様)やビジネスパートナーからの評価

カーボンニュートラルに取り組むことで、お客様やビジネスパートナーからの評価に繋がります。

消費者、特に若い世代はカーボンニュートラルやESGという考え方に敏感です。製品やサービス、そしてプロセスを通じてカーボンニュートラルに取り組むことで支持を得られるでしょう。またカーボンニュートラルは企業単体で達成できるものではありません。サプライチェーン全体が共同体となって取り組む必要があります。必然的に、カーボンニュートラルを実践する企業は、よきビジネスパートナーとして評価されることになります。

一方で取り組んでいない企業については、サプライチェーンから取り残されるなどのリスクが生じる可能性も否定できません。グローバル企業がサプライヤーにカーボンニュートラルの取り組みを求めるケースも増加しています。

補助金の利用もできる

政府は「2050年カーボンニュートラルの実現には、民間企業による脱炭素化投資の加速が不可欠」であるとし、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制を設けています。

また、自治体においても補助金や助成金を設けている場合があり、これらの制度を利用できる点は早く取り組みを始めるメリットのひとつです。

持続可能なビジネスモデルを構築する事ができる

カーボンニュートラルに取り組む過程で、エネルギーをより効率的に使うため、技術的なイノベーションが進むと考えられています。半導体や先進的な原子力発電、デジタル領域などが主な領域です。また企業がカーボンニュートラルに取り組み、環境負荷の低いビジネスモデルにシフトすることで、エネルギーや資源の観点から、持続可能性の高いビジネスを構築できます。

もともと、日本のイノベーション創出の弱さは問題視されてきました。しかしカーボンニュートラルに呼応するように、世界は大きく変革しています。CO2ゼロ社会に向け、日本企業も変革していかなければ、生き残れなくなる可能性が高いといえるでしょう。カーボンニュートラルに取り組むことは、企業における抜本的な変革に取り組むチャンスでもあるのです。

現在におけるビジネスモデルや技術の延長ではカーボンニュートラルの実現は考えにくいため、イノベーションが生まれやすくなるのです。

投資や融資を呼び込みやすくなる可能性がある

カーボンニュートラルは、資金調達にも大きな影響を及ぼすようになっています。世界中の金融機関に課せられた金融機関自体のカーボンニュートラルへの取り組みの中心がESG経営を実践する企業への投融資であり、投資家もそのような企業が市場で評価されることを見越し、投資先を選別するようになっています。

まとめ

今回は、企業がカーボンニュートラルへ取り組む方法について解説しました。

カーボンニュートラルを実現するためには、国や自治体の取り組みだけでは難しいため、企業単位での取り組みが重要です。各企業の取り組み事例を参考にしつつ、支援ツールやサービスなどをうまく活用し、カーボンニュートラルの実現を目指しましょう。

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