カーボンニュートラルへの取り組みについて

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今回は各国・自治体・企業等のカーボンニュートラルへの取り組みについて解説してきます。
カーボンニュートラルは、気候変動の影響を最小限に抑え、地球温暖化の進行を食い止めるための国際社会の一致した努力の一環として注目されています。各国はそれぞれの課題に直面しながらもカーボンニュートラルの実現に向けた道を模索し、具体的な政策や取り組みを進めています。

カーボンニュートラルに取り組む必要性

カーボンニュートラルへの取り組みは、現代社会において重要かつ不可欠なものとなっています。単なる環境保護だけではなく、社会全体に多くの利益をもたらす重要な一環とされています。カーボンニュートラルの必要性は以下の点になります。

気候変動対策の緊急性

地球温暖化や気候変動は、極端な気象や海面上昇などの深刻な影響をもたらしています。カーボンニュートラルへの取り組みは、温室効果ガスの排出を削減し、気候変動の進行を抑制するために緊急かつ積極的な措置が求められています。

環境の保全と生態系への配慮

カーボンニュートラルへの移行は、再生可能エネルギーへの転換を意味します。これにより、エネルギー供給の多様性が増し、エネルギー安全保障が向上します。非再生可能なエネルギー次元の依存を減らすことで、地域や国のエネルギー政策が強化されます。

健康への影響の軽減

カーボンニュートラルの取り組みは、大気汚染や有害物質の排出を削減し、住民の健康を向上させます。特に都市部では交通の電動化やクリーンエネルギーの普及が空気の質向上につながります。

経済へのプラス効果

カーボンニュートラルの取り組みは、新たなクリーンエネルギー産業や環境技術の成長を促進し、新たな雇用機会や経済成長を生み出します。これにより、経済の持続可能な発展が期待されます。

企業の競争力向上

カーボンニュートラルへの移行は、企業にとって競争力向上の要素となります。環境への配慮が強調される中で、クリーンで持続可能なビジネスモデルの採用は、企業の評価や市場での競争上の優位性を高めます。

国際的な協力と持続可能な開発目標の達成

カーボンニュートラルへの取り組みは、国際的な協力の重要性を示唆しています。気候変動に対処するための国際的な取り決めや目標に向けた努力が、地球全体での持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献します。

各国の取り組み

世界の国々は、異なる戦略や手段を用いながらカーボンニュートラルを達成するために国内外で模範となるような取り組みを進めています。

中国

急速な経済成長に伴い増加する環境への懸念を受け、大気汚染や気候変動への対策を強化しています。同国は、2060年までにカーボンニュートラルを達成することを表明し、再生可能エネルギーの導入を加速させています。太陽光発電や風力発電、水力発電などの導入が進んでおり、同時に石炭火力発電の削減や排出権市場の導入など、具体的な規制策も進行中です。

アメリカ

アメリカでは、バイデン政権が環境政策の転換を進め、気候変動への対策を最優先課題と位置づけています。2021年、バイデン大統領は2050年までにカーボンニュートラルを達成することを宣言し、再生可能エネルギーの拡大をはじめとする多岐にわたる施策を進めています。電気自動車の普及、効率的なエネルギー利用の
促進などが一環です。

欧州連合(EU)

欧州連合(EU)は、気候変動への対応において世界的リーダーシップを発揮しています。EUは、2050年までにカーボンニュートラルを目指し、2030年までに温室効果ガスの排出を55%削減するという目標を掲げています。再生可能エネルギーの導入や排出権取引制度の革命が進行中であり、従来の産業から緑の経済への転換が進められています。

日本

日本もまた、気候変動への対策を強化し、2050年までにカーボンニュートラルを実現するための戦略を進めています。再生可能エネルギーの導入や水素社会の構築、省エネルギー技術の研究開発が進む一方で、国内外の企業との連携や国際協力体制の構築にも注力しています。これらの取り組みは、国内経済の転換と共に、国際社会全体での気候変動対策において日本の役割を強調しています。

ノルウェー

ノルウェーは、再生可能エネルギーの導入と同時に電気自動車の普及を積極的に進めています。国内の交通手段の電動化や森林の持続可能な管理などが進行中です。ノルウェー政府は国有の石油ファンドから石油・ガス関連の投資を段階的に減らす方針を採っています。

ニュージーランド

ニュージーランドは、気候変動対策として2050年までにカーボンニュートラルを達成する「ゼロ・カーボン法案」を導入しました。再生可能エネルギーの促進や森林保護が焦点となっています。また、持続可能な農業の推進も行われています。

ドイツ

ドイツは、エネルギー転換(エネルギーヴェンデ)と呼ばれる取り組みを進め、再生可能エネルギーの導入が盛んです。特に太陽光発電や風力発電が拡大しており、同国は2038年までに石炭火力発電を段階的に廃止する方針もあります。

フランス

フランスは長らく原子力発電を主力としており、低炭素なエネルギーミックスを持つ国として知られています。再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率にも力を入れており、同時に脱炭素化のための戦略を進めています。

イギリス

イギリスは、2050年までにカーボンニュートラルを達成する法的な目標を掲げています。
オフショア風力発電の拡大や石炭火力発電所の閉鎖、エネルギー効率向上などが進められています。また、ネットゼロ達成のための政策も進展しています。

企業の取り組み

日本の企業は、21世紀において環境への配慮や持続可能性を重視し、独自の取り組みを進めています。これらの企業は、事業の発展と同時に地域環境への貢献を掲げ、具体的な取り組みを通じて環境への影響を最小限に抑える方法を模索しています。

東芝

東芝では、カーボンニュートラルの対応をグローバルかつ長期的な視野で行っていくことを決め、「環境未来ビジョン2050」を策定しました。環境未来ビジョン2050では、気候変動への対応・循環経済への対応・生態系への配慮という軸を設けました。
気候変動への対応では、2030年までに温室効果ガスを70%削減することや温室効果ガス削減に貢献するような製品開発を目指す見込みです。循環経済への対応では、廃棄物の抑制やリサイクルへの取り組みを主とし、ステークホルダーと連携し、循環型のビジネスモデルへ転換を目指しています。

パタゴニア

パタゴニアでは、気候変動は重要なビジネス課題と明確に位置づけています。
自社店舗や配送拠点のみでなく、温室効果ガスの95%はサプライチェーンまたは素材の段階での製造に原因があり、そのすべての範囲に責任を負うというメッセージを発信しています。
パタゴニアのアメリカ国内の拠点では、すでにクリーンエネルギー利用率を100%としており、日本ではよりクリーンエネルギー比率の高い小規模電力事業者を選択。新たな店舗や事業拠点を設ける場合には、新しい建物を建設せず、既存の建物を選んでいます。

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、環境に優しい自動車の開発と普及に注力しています。電気自動車(EV)および水素燃料電池車(FCV)の開発・販売を通じて、従来の燃料車に比べて低いカーボンフットプリントを実現し、生産プロセスにおいてもエネルギー効率向上を図っています。これにより、企業のカーボンニュートラル実現に向けた努力が集約されています。

東京電力ホールディングス(東京電力)

東京電力ホールディングスも再生可能エネルギーの導入や省エネルギー技術の推進に注力しています。太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入により、企業のエネルギー供給を持続可能なものに転換し、同時にエネルギー供給の安定性と効率向上を実現しています。

ファミリーマート

ファミリーマートは、店舗での環境への配慮に焦点を当てています。再生可能エネルギーの導入や省エネルギー型の店舗設計、リサイクルプログラムの推進を通じて、企業の店舗運営における環境への影響を減少させています。商品の包装材の見直しや再利用プロジェクトも積極的に展開しています。

NEC

NECは、省エネルギーソリューションの提供や再生可能エネルギーの活用に力を入れています。データセンターのエネルギー向上、スマートシティ技術の開発、環境情報システムの提供を通じて、企業のサービス提供における環境負担を軽減しています。

資生堂

資生堂は、商品開発から販売、廃棄までのライフサイクル全体での環境への影響を考慮しています。再生可能素材の使用、従業員の環境教育と参加を通じた浸透、商品の環境への影響評価などを実施し、企業のサスティナビリティに貢献しています。

味の素株式会社

味の素株式会社では、アミノ酸の働きによって世界の人々の健康増進と食習慣の改善への貢献を目指して、持続可能な社会のために取り組みを行っている。
カーボンニュートラル達成に向けた取り組みとして、再生可能エネルギーを導入しています。2017年の段階では、エネルギー使用量のうち約15%を再生可能エネルギー由来の電力としています。再生可能エネルギーの導入は日本の工場のみでなく、ブラジル・タイ・ベトナム・フランス・中国など世界5ヵ国で行っている。味の素株式会社は、今後も再生可能エネルギー導入量を増加させ、2030年度までに再生可能エネルギー利用比率50%の実現を目標にしている。

ソニーグループ

ソニーグループは環境への貢献とサスティナビリティに焦点を当て、2050年までに事業活動全体でのカーボンニュートラルを目指しています。再生可能エネルギーの積極的な導入や省エネルギー技術の研究・導入により、自社の事業所や施設でのクリーンで持続可能なエネルギー供給を推進しています。製品のライフサイクル全体にわたる環境負荷の低減や、サプライチェーン全体でのサスティナビリティ向上にも力を入れており、社会的な側面においてはSDGsに基づいた教育や環境保護、医療支援などの社会課題への積極的な取り組みを展開している。
これらの緻密な取り組みにより、ソニーグループは企業としての環境への貢献と社会的な責任を果たし、持続可能な未来の構築に向けて積極的に貢献している。

自治体の取り組み

横浜市(神奈川県)

横浜市では、再生可能エネルギーの導入として、市内の公共施設や学校に太陽光発電所を設置しています。低炭素交通の促進として、自伝者専用レーンや歩行者専用道の整備、自転車シェアリングの導入を進めています。さらに、地域の緑化として公園の整備や植樹イベントを実施し、市民参加型の取り組みも行っています。

京都市(京都府)

京都市では、歴史的な街並みを保護しながらも、持続可能なまちづくりに取り組んでいます。再生可能エネルギーの活用として、市内の寺社仏閣や施設に太陽光発電を設置しています。また、観光地での地域振興として、電動バスの導入や歩行者天国の拡大を行っています。

札幌市(北海道)

札幌市では、低炭素交通の推進として、市内の公共交通機関の電動化を進め、電動自動車の導入や充電ステーションの整備を行っています。また、廃棄物の削減とリサイクルとして、分別収集の普及やリサイクル工場の整備を進めています。市内の公園や緑地帯も整備され、地域の住みやすさと環境への配慮が進んでいます。

神戸市(兵庫県)

神戸市では、気候変動対策の一環として、市内の公共施設や学校において省エネルギー設備の導入やエネルギー効率の向上を進めています。また、緑のまちづくりとして、市内に公園や緑道を整備し、地域住民が自然と触れ合える環境を提供しています。

仙台市(宮城県)

仙台市は、「エコスマートシティ」を標榜し、再生可能エネルギーの導入や省エネルギーなまちづくりに力を入れています。公共交通機関の利便性向上や地域住民の参加を促進するエネルギーコミュニティの形成が進められています。また、地域の特性に合わせて風力発電や太陽光発電の導入も進んでいます。

つくば市(茨城県)

つくば市は、環境・エネルギー政策の一環として、再生可能エネルギーの利用促進やエネルギー消費の削減に注力しています。市内の公共施設や学校での省エネルギー化が進むとともに、太陽光発電の導入やエネルギーコミュニティの形成が行われています。

コペンハーゲン(デンマーク)

コペンハーゲンは、再生可能エネルギーの導入や都市計画の再構築によって、2030年までにカーボンニュートラルを達成する野心的な計画を掲げられています。風力発電や太陽光発電の拡大といった再生可能エネルギーの導入に加えて、公共交通機関の電動化、自転車インフラの整備など、交通手段の革新を進められています。

ストックホルム(スウェーデン)

ストックホルムは、2030年までにネットゼロエミッションを達成する目標を掲げ、具体的な取り組みを進行中です。公共交通機関の電動化やエネルギー効率の向上、再生可能エネルギーの利用拡大などがその一環として挙げられます。

バルセロナ(スペイン)

バルセロナは、緑のまちづくりや持続可能な交通インフラの整備を通じて、カーボンニュートラルな都市を目指しています。歩行者中心のエリア拡大や自動車道の整備、公共交通機関の拡充などが地域全体にわたる取り組みとして展開されています。

ポートランド(アメリカ)

アメリカのポートランドも再生可能エネルギーの導入や都市計画の見直しを進め、低炭素交通手段の促進に注力しています。排出量の監視や歩行者・自転車利用の奨励など、多岐にわたる取り組みを通じて、地域の環境への影響を最小限に抑え、持続可能な未来への道を切り開いています。

バンクーバー(カナダ)

バンクーバーは、グリーンビルド計画やゼロエミッション輸送の促進など持続可能なまちづくりに注力しています。再生可能エネルギーの活用や省エネルギーな建築物の普及が進み、市内の公共交通機関の電動化が進められています。バンクーバーは、気候変動対策と都市の魅力向上を同時に進める先進的な都市として知られています。

まとめ

今回は、各国・自治体・企業のカーボンニュートラルへの取り組みについてご紹介いたしました。
カーボンニュートラルへの取り組みは、各国と企業にとって重要な戦略となっています。各国は気候変動対策や国際的な責任の観点からカーボンニュートラルを目指し、これによって持続可能な経済構築やエネルギー安全保障を推進しています。
一方で、企業は顧客や投資家の期待に応え、法規制への適応やリスク回避、新たな市場とビジネス機会の創出を見据えてカーボンニュートラルへの取り組みを推し進めています。これらの取り組みは、持続可能な未来への貢献とともに、経済的な成長や社会的な評価向上にも寄与する重要な要素となっています。

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