個人事業主は会社設立する方が得?メリット・デメリットや法人化のタイミング

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個人事業主として会社設立を考える際には、今後の事業展開や融資、税の負担など、数々の問題を検討していかなければなりません。一口に「法人成り」とは言っても、そこにはそれぞれにメリットとデメリットが存在し、法人化の最適なタイミングについても深く検討していく必要があります。 ここでは、これらの問題について具体的に解説していきます。

個人事業主と会社設立の違い 13種

法人は法律により個人と同様の法的権利と義務を有しますが、課税や開業する手続きなどに違いがあります。個人事業主は所得税が課され、開業届を提出するだけで事業を開始できますが、法人は法人税が課され、個人事業主と法人との違いは、下表の通りになります。

ここから、それぞれについて詳しく解説していきます。

個人事業主が会社設立するメリット・デメリット

法人化には、節税や社会的信用度が増すなど数多くのメリットがあります。 しかし、状況によっては個人事業主として事業を続ける方が適している場合もあります。 ここでは、法人化のメリットとデメリットについて詳しく説明します。

個人事業主が会社設立するメリット

個人事業主が法人化することには、主に次の4つの側面から9つのメリットが挙げられます。 それぞれ詳しく解説していきます。

税負担の観点からのメリット(所得税と法人税との税率の違い)

個人事業主として事業を行う場合、所得税が課せられます。個人の所得税は累進課税制度が採用されているため、所得が増えるほど税率も高くなる仕組みになっています。 一方、法人として事業を行う場合は、法人税が課せられます。法人税は最高でも23.20%の税率であり、個人の所得税のように所得が増えるほど税率は高くなるということはありません。 したがって、5~45%の所得税率が適用される個人事業主と比較すると、所得金額によっては法人化により税負担が軽減される可能性があります。

会計的側面からのメリット

会計的側面からのメリットは、以下の3点です。 【赤字の繰越】 青色申告を選択している個人事業主は、赤字を次年度以降に持ち越し、その後の事業所得と相殺でき、この繰越期間は3年間となっています。 一方、法人については、欠損金の繰越控除期間が長いため、十分に活用することが可能です。 こうした点から見ると、節税に関して法人化の利点は大きいと言えます。 【経費の範囲】 法人化により、以下のような項目を経費とすることができます。 ・社長や家族への給与 ・退職金 ・出張手当 ・ ・生命保険料 ・社宅の家賃や火災保険 特に「給与所得控除」「配偶者控除」「扶養控除」を利用することで、所得税を軽減できます。個人事業主では制約のあるこれらの経費が、法人では認められています。社内規定の設定や社宅の条件を世間相場に合わせる必要がありますがこれを活用することで、法人化による節税効果を最大限に引き出せるでしょう。 【決済月を決められる】 法人は事業年度を自由に決定できるため、忙しい時期を避けて決済期間を設定することが可能です。これは、決済処理や確定申告の負担を軽減し、効率的な仕事環境を整える上で大きな利点となります。 一方、個人事業主は1月1日から12月31日までと定められているため、これを変更することはできません。

社会的な信用度によるメリット

社会的信用度によるメリットは、以下の3点です。 【社会保険に加入できる】 法人会に伴い、社会保険への加入が必須となり、社会保険加入による法人の支払い負担が生じます。社会保険の支払い額は、国民健康保険と比較して高額になりますが、その一方で従業員が受け取ることのできる年金額の増えます。社会保険への加入による支出増は、法人側から見れば一見デメリットに感じられるかもしれませんが、従業員側から見れば社会保険への加入は大きなメリットとなり、優秀な人材の確保や事業拡大の観点からも利点となります。 【社会的信用度】 法人化することで得られる利点は、事業における社会的信用度が増すことです。社会的信用度が増すことによって、優秀な人材を集める面でも有益に働きます。 一方で、個人事業主に対しては、「トラブル時の補填を期待できない」「事業の実態が把握しづらい」「何となく不安」といった印象を持っている人が多くいることは確かです。実際に「法人とのみしか取引をしない」という方針の会社も存在します。 法人化は、ビジネスを展開する上での重要な要素です。 【資金調達面】 個人事業主では、資金調達や融資を得るのが難しい場合があります。そうした場合に、法人化して社会的信頼性を向上させ、資金調達を容易にすることができます。銀行からの融資は、返済の能力が判断の基準となりますが、法人であれば事業の安定性を示すことが可能です。また、法人への融資では個人保証が不要となります。資金調達により事業を拡大するだけでなく、経営支援を受けることも可能です。事業を拡大するために出資を受けたい場合には、法人化がおすすめです。

事業の運営面からのメリット

事業の運営面からのメリットは、以下の2点です。 【責任の範囲】 事業に対する責任の負担は、個人事業主と法人では異なります。個人事業主は、事業に関連する借入金や取引先への支払い義務を個人が負担しなければなりません。事業がうまくいかず、取引先への未払い金が発生した場合でも、個人の資産を使って支払いを行う必要があります。 一方で、法人については有限責任であるため、出資に応じた責任を負うだけで済みます。事業がうまくいかなきなった場合でも出資金を失うことはありますが、それ以上の責任を求められることはありません。 【事業の継承】 個人事業では、事業者が亡くなると相続人が事業を引き継がない限り事業は廃業となります。これは取引先から見れば、個人事業主との取引に伴うリスクとなり得ますが、法人化によりそうした事態を防げます。 また、個人事業の場合には相続手続きが遅れると事業用の口座が凍結される恐れがありますが、法人の場合はそのようなリスクはありません。

個人事業主が会社設立するデメリット

法人化には多くのメリットがある一方、デメリットも存在します。法人化の検討前に、あらかじめ確認しておきましょう。

法人税申告書など事務作業の増加

法人化すると、法人税申告書や決算書などの作成が必要となり、事務作業が増えます。全てを自分で行うと負担が大きくなり、一方で税理士などの専門家に依頼するとそれなりの費用が掛かります。コストの削減のために自分で事務作業を行うと本業に影響を及ぼす可能性がありますので、コストや時間、労力など適切なバランスをとることが重要です。

社会保険加入義務になる

法人化により、たとえ従業員が1名であっても社会保険への加入が必須です。これには代表者自身も含まれるため、社長だけの会社でも社会保険への加入義務は変わりません。 また、健康保険や厚生年金などの社会保険料は、会社と従業員で折半することが定められており、従業員が増えればその分会社のコストも増加します。 しかし、このコストは人材の確保や社会的信用とのバランスを考えると必要なものと言えます。コストに関しては、収入の状況や事業の拡大タイミングなど多角的な視点から判断することが重要です。

赤字決算であっても法人住民税は発生する

個人事業主が赤字になった場合、基本的には所得税や住民税の支払い気味はありません。しかし、法人は赤字になった場合にも、法人住民税の支払いが必要となります。法人事業税や法人税は事業所得を基準に計算されるため、赤字の場合は支払いの義務は発生しません。それに対して、法人住民税には資本金や従業員数に基づく均等割が含まれており、赤字決算であっても最低7万円の納税義務が生じます。

費用面でのデメリット(開業手続きと費用)

会社を設立するためには、登録免許税が最低15万円、定款認証手数料が最低3万円、さらに専門家に手続きを委託する場合には約5万円の報酬などの費用が必要となります。 資金面については、理論上1円でも会社設立は可能ですが、取引先や金融機関からの信頼を考慮すると現実的ではありません。さらに、設立に際しての準備費用や運転資金も必要となるため、それなりの資金を準備する必要があります。

個人事業主が会社設立を検討すべきタイミング

個人事業主としての事業が順調に成長し、規模が成長してくると、自ずと法人化が視野に入ってきます。しかし、タイミングについては、どの時期が最適なのか多くの人が迷うとところではないでしょうか。 ここでは、個人事業主が法人化を検討するタイミングについて、3つも観点から詳しく解説していきます。

売上高が1,000万円を超えたタイミング

個人事業主として事業を開始し、年間の売上が1,000万円を超えれば、通常はその2年後から消費税の納税義務が発生します。納税義務の発生前に法人化(資本金が1,000万円未満)すれば、簡易課税制度が改めて適用されるため、さらに消費税の免税事業者としての適用を受けることが可能です。

個人事業の所得が800万円を超えたタイミング

個人事業主と法人では、それぞれ所得税・法人税がことなる税率で計算されます。個人事業主は累進課税率、法人は比例税率です。 例えば、所得が800万円の場合は以下の通りです。 ・個人事業主の税率:23% ・法人税の税率:15% 控除後も個人事業主の税金の方が高くなるため、個人事業の収入が800万円を超えた頃が法人化を検討するタイミングと言えます。 ただし、各条件により税率の条件は大きく変わる可能性がありますので、事業収入が700万円を超えた頃には専門家に相談することをおすすめします。

事業拡大を検討するタイミング

法人向けの事業をメインにしたい場合、個人事業主より法人設立が適しています。自身も法人として活動することで信頼性が向上し、事業の範囲が広がるでしょう。

より多くの資金調達を計画している場合

法人を設立すれば、株式を発行できます。これにより、金融機関やベンチャー企業からの投資を受け入れやすくなり、より大きな規模での資金調達が可能となります。個人事業主としても資金の調達ができますが、融資の金額が少ないことや、使用目的が制限されている場合があるため、大量の資金を必要とする場合には適しているとは言えません。

優秀な人材を採用したい場合

事業を積極的に拡大するためには、人を雇って仕事量を増やす必要があります。一人ではこなせる仕事量には限界があり、売上はある一定のところで頭打ちになることが予測されるためです。人を雇うことは個人事業主でも可能ですが、個人事業主は不安定なイメージがあり、多くの求職者から選ばれるのは厳しいものがあります。優秀な人材と共に事業拡大を進めたいと考えている場合は、個人事業主ではなく、法人化を選ぶことをおすすめします。

まとめ

ここまで、個人事業主と法人との違いやメリット・デメリット、会社設立にあたっての最適なタイミングについて解説してきました。個人事業主が法人化を考える際には、そのメリット・デメリットをしっかりと理解することが重要です。そして現在の状況と照らし合わせ、法人化のメリットとデメリットを比較衝量し、最適なタイミングを見いだしていくことが重要です。

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