会社が大きくなったり、メイン顧客の取引の関係上、会社を移転するケースが出てきます。では本社を移転するときにはどんな手続きが必要でしょうか?
今回は「本店移転登記」について解説していきます。
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本店移転(会社の住所変更)登記とは?
「本店移転登記」とは、会社の本店所在地を変更する変更登記のことです。会社の本店所在地を移転する場合、移転日から2週間以内に本店移転登記をしなければなりません。
株式会社では、商号(会社名)、本店の所在地、事業目的、資本金、取締役会設置有無などが登記事項とされています。これらの登記事項に変更があった場合には、一般の人がわかるようにしなければなりませんので、登記の変更手続き(変更登記)が必要になります。
なお、本店所在地は、会社の定款の記載事項にもなっています。そのため、本店移転の際には、定款も忘れずに変更しなければなりません。定款変更の際には、株主総会の決議が必要になりますので、手続きがより複雑になります。
ただし、定款では、本店は最小行政区画までの記載でもかまわないことになっているので、定款を変更しなくてよいケースもあります。たとえば、定款に本店所在地として「東京都豊島区」と記載されている場合、豊島区内での移転であれば、定款変更は不要です。
本店移転の登記をしないとどうなるのか?
会社が本店の住所を移転したにもかかわらず、本店移転登記の手続きをしていなかった場合、登記簿の記載が実態とは異なることになります。会社の登記は一般の人に会社の実態を知らせるために行うものですから、本店移転が登記簿に反映されていないと不都合なことになります。
本店移転があった場合、本店移転登記をしなければならないことは、法律上も義務付けられています。本店移転登記には期限も設けられており、本店を移転した日から2週間以内に法務局で手続きする必要があります。もし本店移転登記をせずに放置していれば、「登記懈怠」として会社の代表者が100万円以下の過料(罰金)を払わされることになります。
ただし、2週間の期限を過ぎれば直ちに罰金が発生するわけではありません。法務局では、期限後であっても通常どおり登記を受付してもらえます。長期間放置しているほど、罰金を払わされる可能性が高くなるということです。
本店移転登記手続きの注意点について
会社の本店移転手続きを行うにあたり,以下の確認が必要です。
移転先の法務局の管轄が現在と異なるかどうか?
同一管轄区域内での移転の場合は当該法務局に本店移転登記申請をすることで大丈夫です。
他の法務局管轄区域への移転の場合には旧本店所在地の法務局への申請と新所在地の法務局への申請の2件の登記申請書が必要です。ただし,申請書は同時に旧所在地の法務局へ提出します。
株主総会で定款変更決議が必要か
株式会社が本店移転をする場合、取締役会で新しい本店所在地や移転日を決めます。また、それに先立って、株主総会で定款変更の決議(特別決議)が必要な場合があります。会社の定款に「当会社は、本店を〇〇市に置く。」と定めている会社が、同一市内で本店移転するときは定款変更が不要ですが、市外に移転する場合には定款変更が必要になります。
また、「当会社は、本店を〇〇市〇〇 〇丁目〇番〇号に置く。」というように定款で具体的な所在場所まで定めている会社の場合には、本店を同一市内の別の場所に移す場合であっても定款変更が必要となります。
会社名(商号)調査が必要かどうか?
類似商号調査の必要性は会社法の施行によって緩和されましたが、正競争防止法等の観点からも,法務局において変更後の商号の事前調査を行っておいたほうがよいでしょう。
本店移転登記の費用は?
同一法務局の管轄内地域か管轄外地域かによって金額が変わってきます。
同一法務局の管轄区域内での本店移転登記の場合
・登録免許税 30,000円
※司法書士に依頼する場合は別途費用
別の法務局の管轄区域への本店移転登記の場合
・登録免許税 60,000円
※司法書士に依頼する場合は別途費用
本店移転する際に登記変更以外に行うこと
本店(本社)を移転すると言うことは登記以外にもたくさんやるべきことが多いです。
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・引っ越し準備
・取引先などの関係先への移転報告
・新規備品の購入
・電気水道などの住所変更
・名刺や封筒などの印刷物の修正
上記以外にも本店移転の際にやることが出てきますので、「住所変更」しなければいけないことを予めピックアップしておきましょう。
まとめ
本店移転に伴う登記にはお金も準備も必要です。自分たちで行うことも可能ですが、専門家(司法書士など)に依頼することも検討しておきましょう。
本店移転は、経営にとっても重要なことだと思いますので、慎重に検討しましょう。
※法務局HPに申請書の記入例がありますので、ご参考まで。