会社経営や個人で事業を営まれている方に知っておいて損はない制度として小規模企業共済というものがあります。中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が提供している、退職金の出ない小規模企業の経営者や役員、個人事業主の為の共済制度のことです。
今回は、小規模企業共済について解説します。
※この記事を書いている起業のミカタを運営している株式会社ベクターホールディングスが発行している「起業のミカタ(小冊子)」では、更に詳しい情報を解説しています。無料でお送りしていますので、是非取り寄せをしてみて下さい。
目次
小規模企業共済の制度とは?
小規模企業共済は、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)という国の機関が運営しており、退職金の出ない小規模企業の経営者や役員、個人事業主の人が、廃業や退職時の生活資金などのために積み立てる「退職金制度」です。
加入条件についてですが、中小企業(従業員が5人または20人以下の個人事業主または会社の役員・共同経営者)になりますが、業種など加入資格がない条件については下記よりご確認ください。
(出典:中小機構HP 小規模企業共済 加入資格)
小規模企業共済のメリット
小規模企業共済の主なメリットとしては、下記4つが挙げられます。
節税になる
小規模企業共済の最大のメリットは「節税になること」です。確定申告の際は、その全額を課税対象所得から控除できるため、高い節税効果があります。
小規模企業共済の掛金は、全額が経費(個人事業主の場合は所得控除)となるため、掛けた分だけ節税が可能となります。
掛け金を納付したときは、その全額が所得から控除される(=その金額を稼いでいないことになる)ので、支払うべき税金が少なくなります。将来お金(共済金)を受け取るときにも、もちろん税金がかかります。しかし、共済金を一括で受け取ると「退職所得扱い」となり、普通の所得よりも税金が少なく済むのです。
掛金以上のお金を受け取れる
積み立てた金額以上を回収できることもメリットです。受け取り事由、納付期間等さまざまな条件はありますが、長く納付すると将来受け取れるお金が増えます。
但し、元本割れする可能性もあります。掛金納付月数が20年未満の場合は元本割れとなりますので、もし共済に加入し、数年で解約してしまった場合は元本割れとなるため注意が必要です。どうしても解約しないといけない場合には、貸付制度を利用して一時的に借入れする事や掛金の額を最少額の1,000円に引き下げる事などを検討しましょう。
経済状況にあわせて納付できる
月々の掛金は1,000円~70,000円まで500円単位で自由に設定が可能で、加入後も増額・減額できます。会社や個人事業主の稼ぎが少なくなってきたら納付額を減額する事も可能ですし、軌道にのったら増額するといったこともできます。
また、収入が少なくなりすぎた場合には、一定期間「掛止め」し、納付を停止することもできます。つまり、自分の会社の経済状況に合わせて無理なく納付し、将来に備えることが出来るのです。
低金利の貸付制度を利用できる
小規模企業共済の契約者の方は、掛金の範囲内で事業資金の貸付制度をご利用いただけます。低金利で、即日貸付けも可能になります。
貸付制度は、一般貸付け / 緊急経営安定貸付け / 傷病災害時貸付け / 福祉対応貸付け / 創業転業時・新規事業展開等貸付け / 事業承継貸付け / 廃業準備貸付けがあります。貸付制度については下記からご確認ください。
小規模企業共済のデメリット
退職金が出ない小規模事業者の経営者にとって大変ありがたい制度ですが、もちろんデメリットもあります。
早期の任意解約は損になる
メリットの「掛金以上のお金を受け取れる」でもお伝えしましたが、掛金納付月数が20年未満の場合は元本割れとなります。
市況のインフレに対応していない
小規模企業共済は、物価が変わっても将来もらえる支給額の調整がありません。将来に備えた制度ですが、お金を受け取る「将来」にインフレで物価が高騰している場合(つまりお金の価値が下がっている場合)、もらえるお金の実質的な金額は低くなります。
まとめ
小規模企業共済は、退職金制度のない個人事業主や経営者にとって将来に備えることができるありがたい制度です。納付した分は所得から控除されるので節税になります。また、将来もらえるお金は、20年未満に解約しなければ、掛け金以上になることもあり、大変お得になっています。
制度は専門的な所もあり、自分自身で行おうとすると損をしてしまう可能性がありますので、掛金の額や融資を受ける際には、税理士へ相談すると良いでしょう。また、将来の受取りについては、一括受取か分割受取かを同時に受取る国民年金や厚生年金などと併せて検討する必要があるため、社会保険労務士(社労士)に相談することをお勧めします。