経営者の方を、さまざまな方面から支援してくれる「商工会議所」と「商工会」ですが、会員以外では何をするところでどんな違いがあるのか分からない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、商工会議所と商工会について解説していきます。中小企業庁の小規模事業持続化補助金(一般型)の申請に際して、商工会議所又は商工会の確認が必要となったり、マル経融資を受ける時には商工会や商工会議所の経営指導が必要になってきます。様々な補助金や融資などの申請要件となっている所もありますので、是非覚えておきましょう。
商工会議所と商工会の基本理念
商工会議所と商工会の基本理念については以下になります。
・営利目的ではない
・特定の個人、団体の利益のための活動は行わない
・特定の政党のための活動は行わない
上記理念の下、企業の経営相談や経営診断を行っています。経営相談では、経理や税務、労務、法律などの専門的な内容について、経営診断では経営状態や労務管理などの改善に関する助言なども行います。企業経営においての陳情、融資などの窓口、情報提供を行う役割も担っています。このように、同じ理念によって活動を行っている団体ではありますが、根拠となる法律や管轄機関には相違があります。
商工会議所とは?
商工会議所とは、商工会議所法に基づき設立された特別認可法人です。「中小企業の活力強化」と「地域経済の活性化」に向け、政府や地方自治体に対する様々な政策提言、小規模企業の経営支援、地域活性化に向けた諸事業や簿記・産業人材の育成など、さまざまな活動に取り組みます。
商工会議所の加入条件(入会資格)は、「管轄する地域で営業している」「事業を営む法人、団体、個人事業主」この2点を満たせば、規模や業種を問わず入会可能です。また条件を満たさない(管轄地域で営業していない、ビジネスマンである、など)場合は「特別会員」として入会できます。「特別会員」には「選任に関する資格」はありませんが、事業やサービスは会員と同様に利用可能です。
また商工会議所には、大きくわけると以下の組織があります。
各地商工会議所
各地商工会議所では、地域の商工業者の意見を集約し、政策提言、経営支援、地域振興などさまざまな活動を行っています。
日本商工会議所
全国515の商工会議所を会員とし、その活動目的を円滑に遂行できるよう総合調整し、意見を代表するのが「日本商工会議所」です。
商工会とは?
商工会とは、商工会法に基づき設立された特別認可法人です。地域事業者が会員となり、ビジネスやまちづくりのために活動を行う総合経済団体で、二大事業として以下のことが挙げられます。
・経営改善普及事業:事業者の経営改善
・地域振興事業:地域社会の発展
商工会の加入条件(入会資格)は、「管轄する地域で営業している」「引き続き6ヶ月以上、事務所・店舗・工場などを有する」この2点を満たせば、規模や業種を問わず入会可能で、こちらは「法定会員」とよばれます。
また条件を満たさない場合でも、以下の会員サービスを行っています。
・定款会員:定款で別段の定めを行うことで、協同組合や相互会社、信用金庫などが対象となるが、総会での議決権はない
・特別会員(賛助会員):地域外で営業しているが、趣旨に賛同して会員となっている人が対象。総会での議決権はない
入会方法は各商工会によって異なるため、最寄りの商工会にお問い合わせください。
商工会議所と商工会の違い
事業者を支援する商工会議所が市部にしか設立されなかったため、それ以外の町村区域に設立されたのが商工会です。そのため原則として、管轄地域が重なる(商工会議所と商工会の両方がある)ことはありません。また商工会が「小規模事業者の支援」に重点をおくのに対して、商工会議所は事業者支援のほか国際的な活動も行うなど「事業の幅が広い」といった違いもあります。
根拠となる法律と管轄官庁
商工会議所は「商工会議所法」が根拠法となり、経済産業省経済産業政策局の管轄になり、商工会は「商工会法」が根拠法、中小企業庁の管轄となります。同じ経済産業省の下でも根拠法と管轄官庁が異なる全く別の組織です。
主たる地区
カバーする地区が異なり、商工会議所は主に市および特別区、商工会は町村が主になります。これが一番大きなわかりやすい違いといえます。ご自身の事業所がどちらにあるかで大まかな判断はつくかと思いますが、地区によって例外がございます。ご利用の際は必ず地域の商工会・商工会議所ご確認ください。
ちなみに商工会議所の組織レイヤーは全国、都道府県、市区の順に、日本商工会議所、商工会議所連合会、商工会議所になり、515カ所に125万の会員を擁します。また、中小企業だけでなく中堅企業や大企業なども会員になっています。商工会は全国、都道府県、町村の順に、全国商工会連合会、商工会連合会、商工会となっており、1,660団体、81万の会員が所属しています。会員は中小企業者のみでその8割くらいが小規模事業者です。
事業の違い
商工会議所は地域の総合経済団体として中小企業支援事業の他、原産地証明、商事紛争の仲裁等の国際的業務も担っています。商工会は地域に根差した中小企業施策、特に小規模事業施策に重点を置いており、事業の中心は経営改善普及事業になります。
まとめ
商工会議所のほうが都市型で規模が大きく、大企業も会員で国際業務まで手掛けています。商工会のほうは地域密着型のイメージがあります。どちらも補助金はもとより、各種相談窓口、金融支援情報、セミナー、イベント、交流会など様々な中小企業支援メニューが用意されています。
・管轄官庁:経済産業省 経済産業政策局
・地区:主として市の区域
・会員小規模事業者の割合:約8割
・管轄官庁:経済産業省 中小企業庁
・地区:主として町村の区域
・会員小規模事業者の割合:9割超
商工会と商工会議所は、管轄官庁や基となる法律などの違いはあっても、基本理念は同じであり、企業経営における相談を受けたりアドバイスを行う、企業のために活動している団体です。規模の大小はありますが、同列の組織といってよいでしょう。