よく相談者から、個人事業で開業するよりも、会社を設立して法人としてお金を借りる方が融資の借り入れがしやすいのかという質問を受けます。
そこで今回は、「資金調達では個人事業主よりも法人の方が有利なのか」について解説します。
法人だからといって借りやすいということはない
結論からお伝えすると、会社にしても個人事業で始めても、金融機関からはお金を借りられます。個人事業だとお金を借りにくいなどということはありません。
飲食店や美容関連の店舗で開業する方は個人事業主が多いですし、創業融資の代表的な金融機関である日本政策金融公庫は「銀行からの資金調達が難しい個人事業主や中小企業」に対して、積極的に融資を行っており、会社経営者や個人事業主に大変心強い存在です。
法人を設立するには登録免許税などの費用がかかります。合同会社ですと最低6万円、株式会社の場合は20万円を超える費用が発生します。更に税務申告なども、個人であれば自分で所得税の申告書を作成できますが、会社の場合は法人税申告書を自分で書くことは難しすぎます。税理士に依頼せざるを得ませんから、数十万円の費用が発生します。
このように、法人にすると色々コストがかかります。無理やり法人にするのではなく、余計なコストを掛けることなく、個人で開業してしばらく経って事業規模が拡大してから法人にすれば良いのです。
融資を受ける際、重要なこととは
前述のように、創業融資を受ける際に重要なのは「個人か法人か」などの体裁ではなく、あくまでも事業の中身ということになります。業歴の長い会社は、過去の実績や蓄積された資産などをもとに融資を受けることができますが、創業の場合、実績は当然ゼロとなりますので、過去の実績などをもとに融資を受けることができません。
そこで重要になってくるのが、「自己資金」「経歴」「事業計画書」「個人の信用情報」です。
タンス預金ではなく、事業を行う為にコツコツと貯めてきたお金なのか、行う事業の経験はあるのか、その事業は収益が上がる計画なのか、税金・公共料金・携帯電話などの支払いが滞っていないかなどが重要になってきます。
借入する時期は重要
当然、事業の資金繰りが悪い時に金融機関に融資の相談に行っても、難しいのが現状です。融資には、「借りやすい」タイミングが存在します。そのタイミングを外して融資を申し込んでも、それがむずかしいのはあたりまえです。
一番融資を借入しやすい時期は、起業・開業前後です。
起業・開業してから、黒字になるまでの期間の平均が半年程度ですので、起業してすぐに融資を受けずに、半年後に融資を受けようと考えた場合、多くの起業は、半年間赤字が続いている可能性が高いです。赤字続きの会社には、審査が厳しくなる為融資を受けにくくなります。その点、起業・開業前後に、融資を受けることができれば、会社が毎月どれくらいの売上になっているかなどの財務諸表を見せる必要がないため、結果的に、その方の今までの経験値と、自己資金を重視して融資の判断をすることになります。
但し、法人であればリスクは軽減される
但し、金融機関は個人事業主よりも法人を重視する傾向があります。理由としては下記になります。
決算書など数値管理が法人の方がきっちりしているから
個人事業主の場合は、青色申告であっても、決算書を作る法人と比較すると事業や業績の管理責任が緩いのが現状です。
起業・開業前後であればまだしも、銀行は決算書を見て、融資の可否を判断する場合もありますので、その大元となる決算書で赤字やアバウトな内容であったり、そもそも数値管理をきっちりしていないということになれば、融資の判断自体ができないことになります。
個人事業主は公私混同してしまう人が多い
個人事業主の場合は、銀行口座も個人口座、個人名義での借金などプライペートと仕事の切り分けが資金管理上でできないケースが多いのです。また、個人事業主の意識としても、どちらも自分のお金と考えてしまうことが多いのです。
融資をする銀行にとってみれば、融資したお金が個人の交際費や生活費などプライベートな資金として使われたら困るのです。
経営者の意識
法人を設立するということは、それだけ対外的な信用が増し、責任が増し、「会社経営を成功させたい」という意識がありますが、個人事業主の場合は、いい意味でも悪い意味でも個人の意識や責任ですので、金融機関にとっては返済に対する不安要素と見られてしまう可能性があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?融資を受ける際に、法人・個人の違いで、多少のリスク軽減で法人の方が有利に働く可能性はありますが、基本的に審査に影響はありません。大切なのは、自分自身の事業は始めるにあたっての努力(自己資金や経歴)や計画が重要になります。資金調達は起業・開業者にとって大変大事なことですので、重要なことに力を入れましょう。そして、自分だけで悩んでいるのではなく、専門家(税理士など)に相談することも念頭に置いて動いていきましょう。