会社を設立する際には、コストを出来る限り安くしたい、自宅を事務所として利用できるなら利用したいと考えている人も多いでしょう。そんな方にお勧めなのがバーチャルオフィスの利用です。バーチャルオフィスなら普通に事務所を借りるよりも安く済みますし、設立登記も可能です。
今回は、バーチャルオフィスで起業する際に注意すべきポイントについて解説しますので、バーチャルオフィスを借りるか悩んでいる方は参考にしてください。
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バーチャルオフィスとは?
『バーチャル(仮想・実体を伴わない)オフィス(事務所)』
バーチャルオフィスとは、住所や電話番号、FAX番号など会社を運営するに当たって最低限必要な機能のみを低料金でレンタルする事が出来るサービスです。
バーチャルオフィスは海外でスタートし、日本においては2006年頃から急速に広まりました。携帯電話やインターネットによる通信環境が進歩し、オフィスではなく、自宅などで仕事をするスタイルが浸透。それにともなって、バーチャルオフィスの活用シーンは増えてきました。
一般的なオフィスと違って業務を行うスペースはありません。基本的には住所や電話番号だけを借りることになります。そして、郵便物や電話は、バーチャルオフィス側に届くと、自動で設定した住所や電話番号に転送されるようになります。
主なバーチャルオフィスのサービス
バーチャルオフィスは一般的に、レンタルオフィス事業者がサービスの一つとして提供している場合が多く、基本サービスは「住所貸し」です。オプションサービスを増やすにしたがって段階的に利用料金が上がるシステムですが、基本サービスとオプションサービスの区分は事業者によって異なります。
基本サービス
貸し住所
基本サービスである貸し住所では、その名のとおり、物理的な事務所や店舗なしに住所を借りることができます。バーチャルオフィスの住所は名刺やホームページなどに記載できるのはもちろん、事業者やプランにもよりますが、法人の本店や支店の住所として登記できるケースもあります。
郵便物受け取り
住所自体は利用できるものの、利用者がその住所に常駐するわけではありません。そのため、「宅配や郵便物などの受け取りはどうするの?」と不安に感じるかもしれませんが、バーチャルオフィスの基本サービスには宅配や郵便物の受け取りが含まれている場合が一般的。荷物の転送は条件付きで無料としているケースもありますが、一般的には有料の転送オプションサービスに申し込む場合がほとんどです。
オプションサービス
書類保管サービス
会社を設立すると、定款や株主名簿といった書類の保管が必要です。株主名簿は株主名簿管理人がいない場合を除き、本店での保管が会社法によって義務づけられています。そのため、バーチャルオフィスの住所を本店として法人登記する場合は、書類保管サービスがあるかを事前に確認しておくといいでしょう。
個人事業の場合やバーチャルオフィスを法人の本店ではなく支店として利用する場合は、登記した住所で保管する義務はありません。ですが、自宅スペースが狭い、セキュリティの観点から重要書類を自宅で保管するのが心配といった場合は、書類保管サービスがあると便利です。
固定電話番号・電話転送・電話代行・電話秘書サービス
オプションで固定電話番号を提供する事業者もあります。固定電話番号への着信を自分の携帯電話に転送してもらったり、バーチャルオフィスの受付に対応を代行してもらったりすることもできます。固定電話番号があることや、かかってきた電話に即座に対応できる体勢を取っておくことは、取引先からの信用を高めることにつながります。
貸し会議室
バーチャルオフィスで住所だけを借りている利用者でも、時には顧客と商談をしたり、スタッフと一緒に仕事をしたりと、物理的な作業スペースが必要な場面もあるでしょう。多くの事業者はオプションサービスとして会議室の利用を提供していますが、念のため、事前に確認しておくといいでしょう。
バーチャルオフィスで起業する際に注意すべきポイントとは?
バーチャルオフィスは保証金や敷金がかからず、業務用スペースを借りるわけではないので、数千円から数万円のコストで借りることができ、バーチャルオフィスが入っている建物は、駅前の一等地などが多いので、会社の本店所在地が一等地になるというメリットもありますが、逆に不便な点も多くあります。
法人銀行口座の開設が難しい
バーチャルオフィス契約は、賃貸契約書ではなく利用契約書になる為、銀行口座が作りにくいです。会社の法人口座がないと取引ができない企業も多いのでこれは大きなデメリットだと言えます。但し、社名プレート設置で口座開設できる銀行あります。
社会保険や雇用保険の申請が難しい
起業して従業員を雇うと、労災保険に加入する必要がありますが、労災保険は、実際に労働者がいる住所で加入をする事になります。バーチャルオフィスの場合は住所が登録されているだけで実際にそこで働いている訳ではありませんので、労災保険に加入できないというケースがあります。また、社会保険(健康保険・厚生年金)についても同様に加入が厳しいです。
許認可を取得できない
事業内容によっては起業に必要な許認可を満たさないことがあります。一般派遣業や建設業、古物商、出張型の飲食業、税理士や司法書士などの士業、不動産業などは注意が必要です。 バーチャルオフィス契約後に許認可を満たさないと分かれば、起業に遅れが生じ、余分な費用もかかります。許認可に関して不安な点があれば、行政書士などの専門家に相談しましょう。
創業融資が難しい
創業融資は設立直後の会社にとって有効な資金調達手段です。しかし、バーチャルオフィスの場合は、事業としての実態がないとみなされて創業融資が通らなくなる可能性があります。例外として、銀行から信用があり、且つ銀行から進められた場合は受けられるケースがあります。
他社と住所が重複
バーチャルオフィスは、多くの利用者が同じ住所を利用します。インターネット上に所在地を記載したとき、ユーザーが所在地で検索すると、同じ所在地がたくさん表示されてしまいます。バーチャルオフィスに限ったことでなく、レンタルオフィスやシェアオフィスでも同じことが言えるます。
郵便物の受取りや電話に時間のずれが生じる
バーチャルオフィスでは、基本的に郵便物や電話は自宅や携帯電話に転送されます。電話の場合はそれほど問題にならないですが、郵便物の場合はバーチャルオフィスに送られてから自宅等へ転送されるので、本来の受取り日より1〜2日程度遅くなる可能性が高い為、急を要する内容の場合は、不便になります。
その他
バーチャルオフィス運営会社によって登記できない場合があったり、企業との取引自体が出来ないケースもあります。
バーチャルオフィスがおススメな人(事業者)
フリーランスや個人事業主
バーチャルオフィスの活用をおすすめしたいのは、初期投資やランニングコストを抑えたいフリーランスや個人事業主、固定の専有スペースが必要のないIT関連の小規模事業者など。また、営業などの外回りが多く、作業スペースがほとんど必要のない事業者にもぴったりかもしれません。外出によって電話に対応できないといった問題は起こりますが、その場合はバーチャルオフィスの電話代行サービスなどを利用することで解決できます。
複数の店舗を展開する事業者
複数の店舗を持つ会社の場合、本店のみをバーチャルオフィスにする活用方法があります。法人は本店所在地を登記しなければならないので、本店を移転すると「本店所在地の移転登記」が必要です。
本店をバーチャルオフィスにしておけば、物理的な店舗の移転があっても移転登記をする必要がなく、登記費用の負担や手続きの手間を減らすことができます。
まとめ
バーチャルオフィスを利用すれば、少ない費用でビジネスを始める事が出来ますが、労災保険の加入が難しい、預金口座の開設に苦労するなどデメリットもたくさんあります。
自分一人で出来るぐらいの小さなビジネスを行っていて、あまり規模を拡大するつもりがない場合は、自宅住所の代わりにバーチャルオフィスで会社登記をするのも良いでしょう。また本店はバーチャルオフィスで登記して、実際の仕事場を自宅にした場合は、自宅の家賃の一部を経費にすることも可能になったりなど節税上の策もあります。もし不安な場合には、設立関連では司法書士、融資や節税対策は税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。