飲食店を開業をしようとすると大きな金額がかかります。店舗取得、内外装、仕入れ、人件費、販売促進費など、お金がかかる項目も多岐にわたります。なにも計画を立てずに進めてしまうと、後々取り返しのつかない事態に陥ってしまう可能性があります。
今回は、飲食店開業における事業計画書の重要性について解説していきます。
目次
そもそも事業計画書は必要なのか?
事業計画書とは、新たな事業を開始するにあたり、事業の概要と計画を書面に分かりやすく書き起こしたものです。事業計画書を作る意味は大きく2つあります。
1つめは、自分の頭の中にあるイメージや情報を文字や数字に変え、書面にすることで整理する意味です。2つめは、金融機関の融資や出資者に面談・説明を求められたときに使う為です。
頭の中にあるイメージを記憶したり伝えたりするのには限界があります。事業計画書を作成することにより、考えている飲食店のコンセプトから開業にかかる費用、日々の売り上げ見込みまで、いくつもの要素を書面にまとめることで開業計画に無理はないか、改善点を探して見直す、良し悪しを議論する事ができます。
事業計画書の必須項目
事業計画書の書き方に決まりは融資(日本政策金融公庫など)を受ける際に指定されること以外、基本的にありません。ただ、ある程度必要情報を入れておかないと何のための計画か分からなくなります。そこで、必ず押さえておきたいポイントをご紹介致します。
・事業概要(文字情報)
・投資計画(数字情報)
・売上計画(数字情報)
・収支計画(数字情報)
最低限上記の盛り込んだ形で事業計画書を作成しましょう。それぞれのポイントについて説明していきます。
事業概要(文字情報)
自分自身の経歴やスキル、事業をやる目的や将来のビジョンなどの大枠をまず考え、計画に落とし込みます。大枠が決まったら、事業のコンセプト、市場環境、事業ニーズを探っていきます。ここまでで自分が出したいお店の事業骨子(全体像)が見えてきます。
事業骨子(全体像)が決まったら、商品・サービス等の販売価格、営業時間や販促方法、仕入れ方法、事業上の問題点・リスク競合他社比較など具体的に落とし込んでいき、最後に事業に必要となってくる支援者や協力者を洗い出しましょう。そして、中長期的なスケジュールや人員計画を考えていきましょう。
STEP1:まずは「何故起業するのか?」自分が出来ることと事業の目的を考えよう
・屋号
・自身の経歴
・持っているノウハウ・スキル・技術
・起業・開業動機
・経営理念
・事業目的
・将来のビジョン
STEP2:起業目的が決まったら、事業のコンセプトを考えましょう
・事業コンセプト案作成
・事業の市場環境
・事業ニーズ
・独自性
・新規性
・優位性
STEP3:コンセプトなどの事業概要が決まったら、実際の販売価格や広告宣伝、仕入れ先などを考えましょう
・商品・サービス等の販売価格
・広告・宣伝方法と予算
・店舗営業時間
・自社商品やサービスの回収条件(末締め翌月25日支払いなど)
・仕入れ方法と仕入先
STEP4:事業上の問題点やリスクと競合他社との比較
・事業上の問題点・リスク
・競合他社比較
STEP5:事業スケジュール、人員計画、支援者や協力者選定
・事業スケジュール
・人員計画
・出資者
・借入先(金融機関など)
・顧客開拓協力先
・仕入先開拓協力先
・技術・ノウハウ提供先
・専門家(司法書士・税理士・行政書士など)
(参考記事)事業計画書は資金調達の為だけではない!? 起業を成功させる為の事業計画書作成のSTEPを解説
投資計画(数字情報)
事業にかかる費用の総投資額を算出します。必要費用をすべて出しますが、計上漏れがあると資金不足や収支のズレが生じる危険があるので、細かく正確に算段しましょう。そして、投資計画ばかり気を取られて開業の運転資金や生活資金がないという状態にならないように計画を立てましょう。
飲食店を開業する際にかかる費用の大きなものとしては、物件取得に関する費用、店舗投資(内外装工事、厨房機器・備品の購入など)に関する費用、開業後の運転資金です。飲食店の業態や立地、内外装をどこまでこだわるかにもよりますが、だいたい300万円~1,500万円くらいの費用が係る事が多いです。
物件取得費
・保証金・敷金
・礼金(※場合により)
・仲介手数料
・前家賃
・造作譲渡料(※居抜き物件の場合)
・造作譲渡に関わる手数料(※居抜き物件の場合)
・保証会社に支払う保証金(※場合により)
店舗投資(内外装工事、厨房機器・備品の購入など)に関する費用
・内外装
・厨房機器
・看板
・備品(食器、調理器具、ユニフォームなど)
開業後の運転資金
運転資金は予測経費の3ヶ月~6ヵ月分は欲しいところです。運転資金の経費内訳は、家賃、人件費、食材費、光熱費、広告費、通信費、専門家に支払う費用などです。
(参考記事)【飲食店開業】開業資金の目安はいくら必要なのか?
売上計画(数字情報)
開業後の売上を予測し記載します。日別~月間の売上高を予測するのですが根拠がない数字になってはいけません。1日当たり何人集客するのか、客単価はどれくらいかで日ごとの売上高を出せますが、ポイントになるのが時間帯ごと曜日ごとでだすのが大事になっていきます。
特に重要になるのが、平常時(ミドル)、低調時(ワースト)、好調時(ベスト)の3つのパターンを出すことで、信憑性・妥当性を生むことができます。またエリアマーケティングをすることで、集客予測の裏付けもできますので押さえておきたいところです。
収支計画(数字情報)
上記、売上計画に対してランニングコストを引いた時にいくら利益が残るかを算出し記載します。
ランニングコストは家賃や減価償却費などの固定費、FL(食材費・人件費)、広告料などの変動費に分かれ、割合としては固定費30%・F30%・L30%が一般的になります。理想はFL合計50%前後です。どれくらいの利益が出るのかが重要になりますので、こちらもミドル、ワースト、ベストの3つのパターンを出すことで信憑性・具体性が出ます。但し、それぞれのお店の状況や業態により最適なFL比率は異なります。通常このFL比率が60%を超える場合には、材料のロス(廃棄損)や過剰な人員の配置等がないか、メニュー構成やスタッフの配置・シフトなどについて見当し直す必要があります。
節約できるポイントも抑えておこう
数字の部分で、予め節約できるポイントも抑えておきましょう。
飲食店開業において大きな金額がかかる所として、物件取得費用、内外装などの工事費用、設備・備品費用、商品の仕入れ、宣伝費用などが挙げられます。交渉や考え方ひとつで節約できる所もありますので、自分1人で考えるのではなく、色々な方の意見を聞いてみるのも一つのやり方です。
(参考記事)【飲食店開業】開業準備資金の節約ポイントとは?
日本政策金融公庫の『創業計画書』
ほとんどの起業家、個人事業主の方は、創業融資を検討する際に「日本政策金融公庫」を候補に考えます。日本政策金融公庫は、100%政府出資の政策金融機関で、「銀行からの資金調達が難しい個人事業主や中小企業」に対して、積極的に融資を行っており、会社経営者や個人事業主に大変心強い存在です。
日本政策金融公庫から融資を受ける際に必要になるのが、創業計画書になります。この計画書を使って融資の審査面談に臨むことになります。詳しい書き方については、以下を参考にしてください。
(参考記事)資金調達検討者必見!日本政策金融公庫の創業計画書の書き方
まとめ
いかがでしたでしょうか?事業計画書は頭の整理や開業資金調達に必須な書類です。細かく数字を分析し、それを明確な形で書類にまとめる事は今後事業を展開するうえで大変重要になりますので、今後の事業経営に役立てるために作成しましょう。