法人設立を考える場合、どんな法人形態を検討するのでしょうか。一般的には、株式会社が真っ先に思い浮かぶかと思います。但し、法人の設立目的によっては、他の法人形態の方が適している場合もあります。今回は法人形態の一つ「一般社団法人」のメリット・デメリットについて解説していきます。
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目次
一般社団法人とは?
一般社団法人は、営利を目的としない法人で、人の集まりを基盤とする法人です。ある共通の目的を持った人が集まり、その「団体」に対して、(法によって)人としての権利を与えられた法人を「一般社団法人」と呼びます。目的を持った人の集まり(団体)には、自治会、研究会、福祉・医療学会、協会、資格団体など、様々なものがあります。
一般社団法人は、ただ人が集まっただけでは任意団体ですので、団体名義で契約をしたり、銀行口座を作ったり、財産を持ったりすることはできません。そこで、一般社団法人化することで、この団体に法人としての権利を与えるのです。そうすることで、銀行口座が開設したり、会員から徴収した会費を使って適正に法人を維持、運営していくことが出来ます。
一般社団法人を設立するには、「一般社団法人」という名称を前後どちらかに(ほとんどが前です)つけなければなりません。そして、設立するには、2人以上の設立時社員(発起人)が必要になります。2人以上の社員がいれば、設立後に社員が1名に減っても、解散になりません。ただし、社員が0名となった場合には、解散になります。設立時に係る費用は以下になります。
設立時に係る費用内訳
・登録免許税:6万円
・公証人に払う、定款認証手数料:約5万円
法人自身の財産は不要=設立時の資本金の払込は不要という特徴があります。その他に、印鑑代や住民票の取得費などの細かい費用も合わせると、最低でも約12万円は必要です。書類の作成を専門家に依頼すると、さらに費用がかかります。
公益社団法人と一般社団法人の違いは?
平成20年の制度改正以前は「社団法人」のみで、一般社団法人と公益社団法人はありませんでした。制度改正以前の社団法人は公益性が求められ、設立にはさまざまな要件をクリアする必要がありましたが、平成20年の制度改正で、社団法人はなくなり、一般社団法人と公益社団法人の2つに分かれています。
公益社団法人は、利益を分配しない非営利であることは同じですが、加えて公益性があることが求められます。設立には、一般社団法人を設立し、さらに公益認定委員会の認定を受けなくてはいけません。公益社団法人になると社会的信頼性の向上や税金の優遇などのメリットもあります。しかし業務内容が制限され、行政庁の監督や指導があるため、認定されてから継続して活動を続けていくのは一般社団法人よりも難しいです。
一般社団法人設立のメリット
一般社団法人にしかないメリット・デメリットがありますのでお知らせします。
・法人として活動が可能
・少人数でも設立できる
・設立コストが安い
・事業内容に制約がない
・社会的信頼性が高い
・基金や寄付金を集めやすい
・行政への事業報告が必要ない
非営利のため利益は分配できませんが、メリットも多いので、一般社団法人を設立するならメリットをしっかりと活かした形で運営していきましょう。
法人として活動が可能
一般社団法人は、法人として活動できるため、口座や賃貸などを法人名で契約できます。個人名で契約するよりも信頼性が高くなるため、新規契約も取りやすくなるでしょう。個人の口座とも分けて管理できるメリットもあります。
少人数でも設立できる
一般社団法人は、最低2人から設立ができます。さらに、設立後に1人になったとしても解散する必要がないので、非常に小規模でも活動を続けることが可能です。同じ利益を分配しない非営利団体に「NPO法人」がありますが、社員が最低10人以上必要になるため、どうしても規模が大きくなってしまいます。
設立コストが安い
一般社団法人には資本金制度がありません。株式会社のように株主もいませんし、出資という概念もありません。設立時に財産を出資する必要がありませんので、0円で設立できます。もちろん設立するための法定費用はかかります(公証役場での定款認証手数料や法務局での登録免許税で約11万円)。それでも株式会社は法定費用だけでも約24万円かかりますから、大きな差です。NPO法人に関しては法定費用はかかりません。
事業内容に制約がない
株式会社と同じように目的や事業内容に制約はなく、公益事業や共益事業(法人の会員に限定されている事業)、収益事業も行えます。もちろん法に触れるような事業でないことが前提です。NPO法人であれば活動範囲が法律に定められた20分野に特定されていますので、本来の事業に支障がない範囲でしか他の事業を行うことができません。
社会的信頼性が高い
法人ではない任意団体と比べると、社会的信頼性は高いです。設立登記しているので、事業内容などは法務局で誰でも確認できることも、信頼性に繋がっています。歴史や実績の少ない会社からすると、初めから信頼性が高いのは非常に重要です。
基金や寄付金を集めやすい
一般社団法人には活動資金を確保するための手段として「基金制度」が設けられています。株式会社は資本金を元手に事業を行いますが、一般社団法人にはそもそも資本金制度がありませんから、その活動資金をいかに確保するかが問題になります。設立発起人が一般社団法人の運営に必要となる経費を負担するか、事業収入を確保するかしなければなりませんが、それだけは事業継続が困難となることも大いにあり得ます。そこで、一般社団法人にも資金を調達しやすい制度が必要でなないかということで法整備されたのが基金制度です。
行政への事業報告が必要ない
一般社団法人には、行政からの監督などはありません。NPO法人では、所轄庁からの監督があり、業務報告を毎年提出しなくていけないなど、活動に何かと制限があります。一般社団法人は、活動の制限や報告義務が必要なく、情報公開も必要ありません。NPO法人と比べると、設立のハードルはずっと低くなります。
一般社団法人設立のデメリット
・事務処理や書類管理が複雑
・利益が出ても分配できない
・株式上場できない
・役員の登記手続きがある
状況によっては株式会社を設立したほうがいい場合もあります。デメリットもきちんと確認しておきましょう。
事務処理や書類管理が複雑
一般社団法人は、個人ではなく法人になるため、事務処理や税金関連の書類管理は複雑になります。また、非営利事業と営利事業を明確に分けて管理する必要があるため、さらに手間がかかります。規模にもよりますが、専門知識のある人を雇うか、税理士などの専門家に依頼しないと管理できないこともあります。
利益が出ても分配できない
一般社団法人は非営利法人であるため、事業活動を行って余剰利益が出た場合でも、社員に分配できません。もしそのような定款の定めをしても無効です。株式会社では利益が出ると株主に利益を配当することができます。株主からすると配当がもらえるため出資をするメリットもありますが、一般社団法人の社員にはそのようなメリットはありません。
株式上場できない
一般社団法人は、株式会社ではないため、事業が上手くいって活動範囲を広げたいと思っても株式上場はできません。そもそも株式上場は利益を追求することになるので、一般社団法人の非営利とは全く異なるものです。それでも、将来的に事業を大きくしていきたいと考えているなら、株式会社を設立するほうがいいでしょう。
役員の登記手続きがある
一般社団法人では、理事の任期が最長で2年、監事の任期が最長で4年です。役員の任期が切れると同じ人が再任する場合でも法務局へ登記する必要があります。最低2年に1度は役員再任の手続きに掛かる書類作成と登記手続きの登録免許税がかかることになります。株式会社では役員の任期は最長10年ですので、一般社団法人の方が煩雑になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?一般社団法人には、株式会社などにはないメリットが多くあります。任意団体でも十分に機能することもありますが、社会的信頼性を考えると一般社団法人が有利になります。非営利事業(同業者団体・学会・同窓会等)を組織的に運営したいと考えている方は、ぜひ一度検討されてはいかがでしょうか。