あなたの事業ではどんな取引先の方がいますか。販売先・仕入先に加え、金融機関や店舗の貸主、人材紹介業、人材派遣業など様々な取引先と協力していることでしょう。ときには同業他社と一緒にキャンペーンを打つこともあるでしょう。しかしながら、この「交渉」というものに苦手意識を持つ方が多いように感じます。
そこで今回は、ショッピングビルの店舗の販促の事例から、押さえておきたいBtoB交渉のコツについて解説します。
自分が相手の社長だったら受け入れる提案を作る
外部との交渉の目的は自社の利益です。そこがスタートになります。店舗の販促であれば認知度の向上や来店数の向上が挙げられます。交渉の相手はショッピングビルの営業担当です。
ここでやってはいけないことが「お願い」をすることです。そんなことをされても相手は困ってしまします。お願いをする人と受け流す人という対立関係に立ってしまいます。お願いをしたい気持ちは分かりますが、相手を困らせるだけです。ここで大切になる発想が相手の立場になってみることです。ショッピングビルの収益は直営店やテナントの売上の一定割合+固定の賃料です。ですので企画を提出する際は自店舗だけではなく周囲の店舗の売上も向上すること、ビル全体の来客数が増えることなどを提示することが一番です。交渉相手のビジネスを理解し、相手の社長だったら受けたいかを考えましょう。
交渉相手のミッションを知る
さきほど交渉相手の社長だったら受けたいかがポイントになると述べました。しかしながら、直接話す相手が社長でない場合も多いでしょう。特に大企業であればトップとの直接交渉は中々できません。
ここであなたが経営層に近い場合に陥りがちな落とし穴があります。それは交渉相手が自社の利益のために動くという思い込みです。自社の利益のために動くのは当たり前では、とお考えになるかもしれません。しかしながら、サラリーマンは自社の利益のみを見てはいません。例えば・・・これ以上忙しくなりたくない、それよりも個人目標をクリアしたいといった個人的な本音を持っています。自社全体の利益とどちらを優先するかはその人次第ですが、一般的に経営者から遠ざかるほど個人的な利益のために動く傾向があります。
そこで、交渉相手の判断基準を探るいい方法があります。これは日ごろからの意思疎通の中で聞きだしてください。それはボーナスの算定基準です。開業した当初の事業主の方には縁遠いものですね。しかし、従業員を雇用している方にとっては理解しやすいのではないでしょうか?サラリーマンはボーナスを増やす方向に努力をするものです。ですのでボーナス基準やそのもとになる目標項目を知っておくことが大切です。
交渉相手が上司に説明しやすいようにする
交渉相手をクリアした場合でも企画の決裁が下りないことがあります。それは交渉相手がその上司を説得できないからです。そこであらかじめ意識すべきことは社内稟議のための資料を用意することです。これは融資交渉においても同様です。担当者との「握り」は口頭でも社内稟議は文書で行われます。初めて企画を知った上司の方が前向きになるための資料を担当者に渡しましょう。この時点で一緒に企画を実現するための同志という立ち位置が成立します。
まとめ
いかがでしたでしょうか?対外交渉の基本は
・①相手の企業の立場に立つ
・②相手の担当者の立場に立つ
・③社内稟議を見据えた資料を用意する
この3点です。特に経営者に近い方が陥りがちなのが②や③です。経営者同士の交渉では考慮する必要のないことです。相手企業のみではなく交渉相手のことを知ることが重要です。そのためにも普段の何気ないコミュニケーションを大切にしましょう。
彼を知り、己を知れば百戦危うからず(孫子)です。
今回は店舗販促を例にしましたがすべての対外交渉の基本になります。独立開業した経営者のすべての方が法人営業経験が豊富なわけではありません。初めのうちは中小企業診断士や販売士といった営業の専門家のアドバイスを得ながら、販売計画・販促計画を作っていくことをお勧めします。
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(執筆者:認定経営コンサルタント(中小企業診断士) 鈴木 崇史)
(編集:起業のミカタ編集部)