税理士は、税理士にしかできない独占業務があるために、資格さえあれば非常に独立しやすい職業であり、8割近くの税理士が開業しているという統計もあります。
今回は、税理士での開業について解説していきます。
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必要な資格
一般的に税理士の資格は難易度が高い資格として広く知られており、資格を取得するのは簡単ではありません。税理士試験は全部で11科目あり、その中の5科目に合格しなければならないため、働きながら勉強を続ける方も多く、合格までに10年以上の年月を費やす人も少なくありません。
税理士試験に合格するか弁護士、公認会計士の資格取得者で、日本税理士連合会の税理士名簿に登録することが必要になります。また、税務に関する実務経験2年以上のものがその資格を得ることができます。
必要な手続き
所属税理士が開業税理士になる場合、「登録情報の変更手続」の申請が必要です。以下、東京税理士会の例を基に、登録変更申請に必要なものを紹介します。
・変更登録申請書 (第25号様式)1通
・変更登録申請に関する届出書 (第26号様式)1通
※所属支部での収受印を押したもの
・写真 (縦2.8センチ×横2.4センチ)1枚
※事務所所在地の変更により、所属支部が変わる場合は2枚
・事務所所在地の賃貸借契約書のコピー、 事務所設置同意書、登記簿謄本のコピーなど
・変更登録手数料 5,000円
※郵送提出する場合は、「現金書留」にて送金
これらの書類や手数料を用意し、税理士会の事務所に直接出向くか、または郵送での手続きが可能です。税理士証票の書き替えには約1カ月必要なので、余裕を持って申請をしましょう。実際に手続きをする際には、所属する税理士会の情報を確認するようにしましょう。
税理士としてかかる費用
続いて、税理士事務所を開業するために発生する費用について紹介します。登録にかかる費用は、以下の通りです。
日本税理士連合会に税理士として登録するためにかかる費用
・登録免許税:60,000円
・登録手数料:50,000円
・登録時研修費用:5,000円
※登録時研修は、税理士登録直後に受講が義務付けられている研修で3日間にわたって実施されます。
所属する地域の税理士会支部の入会金・会費など
・税理士会入会金:30,000円~50,000円
・税理士会年会費(年間):100,000円~150,000円
・会館建設費:20,000円~50,000円
税理士会の支部を選ぶことはできず、先生の事務所の位置によって自動的に所属する支部が決まります。支部は、「東京」「近畿」などの大きなブロックと、「新宿」「浪速」などの小さなブロックの両方に所属する必要があり、その両方に年間費用を納めなければなりません。支部によって入会金、年会費は異なりますので、各支部に確認しましょう。
自分の特異ジャンルに特化したサービス展開を!
税理士は、税理士法にもとづいて認定された国家資格になります。税理士法では、税理士だけが行うことができる業務(独占業務)を定めています。具体的には「税務書類の作成」「税務代理」「税務相談」などになります。この業務を税理士資格のない方に相談することはいくら無償でも法律に反することになります。専門的な作業の為、本人が行うと大変時間がかかり、正確な処理も出来ません。まさに税理士に依頼する最も適した業務になります。
但し、国内に税理士は多くいますので、これまで手掛けてきたジャンルを強みに特化型の税理士事務所を開業することを目指していきましょう。
税理士の特化型のサービス
・国際税務
・国税調査
・相続
・資金調達
・節税対策
・経営支援
・業態・業種特化 など
飲食業界、不動産業界、美容業界といったクライアント特化型の他、国際税務や資産税、相続税などの業務特化型にすることもできます。特化型であることをウェブサイトや広告でアピールすることで、得意分野の仕事に集中的に取り組むことが可能になります。得意分野で力を発揮できるだけでなく、スキルアップにもつながります。雇用されている場合は自分で仕事を選ぶことは難しいですが、自ら専門分野を掲げアピールできるのは、開業税理士の特権といえます。
将来的には不安がある!?
AIの進化や人口・企業の減少など懸念がありますが、複雑な税務の作業や相談を顧客から請け負う税理士の業務はコンピューターでの対応が難しく、また「税」という国家運営の基盤となるシステムに関わる仕事ですから、常に一定数のニーズが保たれ続ける公算が大きいです。
但し、税理士の飽和状態も起きており、企業数も減少が予想されますので、独自のスキルやコミュニケーション能力、強みを持っていないと継続することは困難です。
「税理士事務所」「税理士法人」の違い
税理士という資格は個人に与えられるものですので、税理士が開業しようとすると個人事業主となります。これが一般的に税理士事務所と呼ばれるものです。税理士法人とは、2名以上の税理士を社員として設立される特別法人で、ここで言う社員とは一般的な従業員という意味の社員ではなく、法律上の法人の構成員という意味です。
つまり、税理士事務所では税理士として責任を負うのは一人だけですが、税理士法人では複数いるということになります。税理士が必ず複数存在するということから、税理士法人のほうが規模的に大きいところが多いですが、どちらも税理士事務所であることに違いはありませんので、行う業務の内容も同じになります。
まとめ
税理士は、すでに契約されている場合が殆どで、新たに顧客を新規開拓するのは難しいです。新規開拓のためにも異業種交流会や、創業セミナーなどで新たに起業する人とのネットワークを構築していく必要があります。税に関する法律や判例は常に変化するものなので、新しい知識や情報を日々収集する必要がありますので、顧客開拓と含めて日々進歩していかなくてはいけません。